メロウでチャーミング。タイムマシーンも発動した“緊急事態宣言”の夜
「INO hidefumi THE SESSION」のvol.5は、INO の長年の盟友的存在・藤原ヒロシを招いて行われた。この日は東京・大阪・兵庫・京都に3度目となる緊急事態宣言が発出された日曜日の夜。春らしい穏やかな気候にも世間の嘆息が波動のように感じられる中、20時からのライブはINOの代名詞的楽曲、「Love Theme From Spartacus」からスタートした。
2007年頃から不定期に音楽活動で交わるようになった二人は、それぞれのアルバムの楽曲で共演しながら、これまでに70回以上ものライブを共にしてきた間柄。世界のストリートからメゾンまで常に注目を集める藤原ヒロシは言わずもがな、ともに“洒落者”として知られる二人の配信ライブの出で立ちは、藤原が薄いピンクのシャツにアコースティックギター、INOがダンガリーシャツにフェンダーローズを前にしたシンプルさ。二人ともサングラスをかけているので表情は見えないものの、交わされる会話からも、親密でリラックスした雰囲気が伝わってくる。
と、思いきや、意外にも二人は久しぶりのライブ、しかも藤原は慣れない配信で多少の緊張をしていたことを明かした。2020年にサカナクションのNFレーベルから『slumbers 2』を出した際に収録された「TERRITORY」で藤原が透明感のあるヴォーカルを披露した後、藤原は「ああ、あんなに練習したのに(笑)」とINOに訴えた。どうやら1曲目の「Spartacus」でミスがあったようで、その無念さを滲ませる発言からも藤原の音楽への想いの深さが感じられた。
藤原の“意外な緊張”をよそに、それでも配信ライブは進んでいく。1994年にリリースされた藤原の1stアルバム『Nothing Much Better To Do』に収められた楽曲で、The Specialsのテリー・ホールが歌った「Getting Over You」、ノスタルジックな雰囲気の「CANDY」へと続く。藤原のアコースティックギターとINOのフェンダーローズ、そして二人の掛け合いのボーカルが高域と低域で行き来をするうちに緊張がほどけたのか、今夜の「THE SESSION」が形成されていく空気が漂い始めた。
「ヒロシさんの高いキーのヴォーカルいいですよね。羨ましい。プリンスに声が似てるって言われません?」とINO。「言われません」と一言で返す藤原。ライブの曲間に交わされるテンポのいい会話のゆるさも、この配信ライブの姿の見えないオーディエンスたちを癒していく。
今夜そんな二人の会話のキーになったのが、5曲目の「TIME MACHINE」。藤原の『slumbers 2』に収められ、シングル配信もされたこの楽曲で藤原がカッティングギターとヴォーカルを披露すると、演奏後にINOが「ヒロシさんはタイムマシーンがあったら、いつに戻りたいですか?」と問いかけた。すると藤原は「20分前に戻って『Spartacus』からやり直したい」と答える。
その後も藤原ヒロシ+YO-KINGのユニットによるAOEQの「最優先」、インスト曲の「DAWN」と藤原の楽曲が続き、「こんな転調が難しい曲をよく創れるね」と言いながらギターで伴奏に回ったINOの「奇蹟のランデブー」(『SONG ALBUM』に収録)の演奏を終えると、「(今夜のライブの)ヤマは超えたかも」と藤原は安堵の表情を浮かべた。
いい大人が二人揃ってこんなにチャーミングでいいのだろうか、と感じた人も多いこの時間帯からライブは後半へ。藤原によるアップテンポなヴォーカルの「WHITE」(『slumbers』に収録)、そして映画『ディアハンター』の楽曲で、藤原がフランスのファッションブランドA.P.C.の設立者ジャン・トゥイトゥと作った「THE A.P.C. 005 EXPERIENCE」に収めた「CAVATINA」と続く。この曲でダブアレンジを手がけた故・朝本浩文に向けて、INOが追悼の言葉をたむけた。
終盤はINOがその影響を隠さないYMOやティンパンアレイ関連の楽曲が2曲続く。ライブや楽曲でINOも共演を果たした鈴木茂の代表曲「ソバカスのある少女」をINOと藤原が掛け合いで歌い、高橋幸宏の「Saravah!」へと流れる。藤原は「この頃の曲には当時そんなに馴染みがなかったけど、いい曲だよね」と、二人の音源的交流を感じさせる会話から長年の親密さを滲ませた。
ライブの予定時間は1時間半。もう一曲で終わり、というタイミングで、突如藤原が先ほどの“タイムマシーン”の使用を要求した。冒頭曲の「Spartacus」をもう一回リベンジで演りたいとINOに持ちかけたのだ。「本当にやるんですか?」とINOはいぶかしがりながらも演奏すると、今度は藤原も納得の出来に。そして最後にAOEQの「消えない虹」を二人の掛け合いで歌い、この穏やかな配信ライブは終わりの時間を迎えた。
ニューアルバム『In Dreams』も2021年5月16日(日)発売が決定し、5月19日からは大阪、横浜、東京のビルボードでリリースツアーも決定しているINO。そしてこのツアーには藤原ヒロシもゲストで登場する予定ということもこの配信ライブで明かされたので、緊急事態宣言明けの無事の開催を二人のファンとともに祈りたい。
フェンダーローズの名手として知られるキーボーディストINO hidefumi(猪野秀史)がホストとなり、御茶ノ水 RITTOR BASEから行う配信ライブシリーズ=“INO hidefumi THE SESSION”。ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、鈴木茂、そしてゴンドウトモヒコ、高野寛に続き、5回目となる今回は、ゲストに藤原ヒロシを招き4月25日に開催します!
藤原ヒロシは1980年代よりクラブDJを始め、1985年に高木完とともにTINNIE PUNXを結成。日本のヒップホップ黎明期を支えた一人です。1990年代からは音楽プロデュース/作曲家/アレンジャーとして活動の幅を広げる一方、ファッションの分野ではストリートカルチャーの牽引者としてワールドワイドで知られる存在となりました。
INOはこれまで何度も藤原と共演してきましたが、今回は初となる配信ライブセッション……しかもサポートメンバーを加えず二人きりで演奏を行います! それぞれの持ち曲や意外なカバー曲を、定評あるRITTOR BASEの映像・音響システムを生かした極上のストリーミング配信でお楽しみください。
そして!毎回好評のコラボTシャツですが、今回は藤原ヒロシがデザイン!! サイズはLのみで、ブラックとホワイトの二色展開。視聴券とセットのお得な価格設定となっていますので、ぜひお求めください!
<INO hidefumi THE SESSION vol.5 featuring 藤原ヒロシ>
開催日時:2021年4月25日 (日) 20:00- (演奏は1時間強を予定。アーカイブは2021年5月2日23時まで視聴可能)
ストリーミング視聴券:2,200円
Tシャツ付ストリーミング視聴券:5,500円
*Tシャツの発送は5月末を予定しています。あらかじめご了承ください。
<視聴の際の注意事項>
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